column コラム
長期優良住宅って?-2
「長期優良住宅」のお話の2回目です。
今回はメリット・デメリットにつういてお話いたします。
長期優良住宅のメリットは?
メリット1:快適かつ安心できる家に、世代を超えて住み継ぐことができる
ここからは長期優良住宅のメリットを5つ紹介しましょう。
まずは、高い性能によって快適かつ安心して暮らせる家になり、次の世代も住み継げることです。例えば、耐震性を満たすことで、大きな地震でも家の損傷が抑えやすくなり、住み続けるための改修も容易に行えます。また、省エネ性を満たすと断熱性が高まり、エアコンなど空調機器の効きが良くなるため、少ないエネルギーで夏は涼しく・冬は暖かく過ごせる家になります。
「日本では断熱性が低い住宅が大半のため、冬に自宅で心臓、脳、呼吸器系疾患による死者が、夏の2倍程度発生しているという調査結果があります。断熱性が高い家が当たり前のイギリスの住宅の健康・安全性評価システムでは、室温が16℃以下の住宅では呼吸器疾患や心血管疾患などにリスクを与え、10℃以下では心臓発作や脳卒中などの心血管疾患による冬の死亡率が50%上昇するとしています。
このように、断熱性の低い家は健康に悪い影響を与えることは明らかです。断熱性の確保は、家族が健康な暮らしを送るうえで非常に重要といえるでしょう」
長期優良住宅なら、全ての年代の人が快適かつ健康に暮らせるでしょう(画像/PIXTA)
メリット2:減税が受けられる
長期優良住宅の認定を受けると、さまざまな税の特例措置が受けられます。いずれも期間が定められた措置なので、利用を検討する際には期限を必ず確認してください。
住宅ローン減税
住宅ローンを借りて家を建築/購入した場合に、年末ローン残高の0.7%が所得税・住民税から13年間控除されます。控除限度額は一般住宅が3000万円ですが、長期優良住宅なら5000万円になります。※2025年末までに入居した場合
実際の納税額が控除額の上限になるため、すべての人が限度額上限まで控除を受けられるわけではありませんが、控除限度額が2000万円もアップするのは大きなメリットになります。
不動産取得税
不動産取得税とは、住宅・土地の購入時に支払う税金です。一般住宅は課税標準から1200万円控除されますが、長期優良住宅は1300万円まで控除されます。※2024年3月31日まで
登録免許税
登録免許税とは、住宅・土地の購入時や新築時に、所有権を登記する際に払う税金です。戸建ての一般住宅の税率は保存登記0.15%、移転登記0.3%ですが、長期優良住宅なら保存登記0.1%、移転登記0.2%と税率の引き下げが受けられます。※2024年3月31日まで
固定資産税
住宅・土地の所有者が支払う税金です。新築時に税額が1/2に減額される減税措置が受けられますが、その期間が、戸建ての一般住宅は3年間、長期優良住宅なら5年間に延長されます。
メリット3:住宅ローン金利が引き下げられる
長期優良住宅を建てて認定を受ける場合、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携した住宅ローン【フラット35】の、【フラット35】Sを利用することができます。【フラット35】Sは、【フラット35】の借入金利を当初5年間0.5%、6年目から10年目まで0.25%引き下げられるため、借り入れ当初の返済負担を軽くすることができます。
メリット4:地震保険料の割引きがある
長期優良住宅の認定を受け、所定の書類を保険会社に提出することで地震保険料の割引きが受けられます。例えば、耐震等級2なら30%、耐震等級3なら50%の割引率が適用。免震建築物でも50%の割引きが受けられます。
耐震性が高いため、地震保険料の割引きが適用されます(画像/PIXTA)
メリット5:補助金制度を利用できる
性能に優れた木造住宅を新築・購入すると補助金が交付される「地域型住宅グリーン化事業」は、認定を受けた長期優良住宅が利用できる制度です。補助額の上限は110万円となっています。制度の利用には、国土交通省から採択された中小工務店が建てることや、原則として地域材を利用することなどの要件があります。
「地域型住宅グリーン化事業は、地域の木材関連事業者や工務店を活性化できますし、地球環境への負荷も低減できる素晴らしい制度だと思います。地域経済へ貢献したい方や、サスティナブルな家づくりがしたい方は是非利用を検討しましょう」
長期優良住宅のデメリットは?
デメリット1:申請に費用がかかる
長期優良住宅制度を申請するときには、認定申請書や複数の添付書類が必要です。このため、書類の作成や代行申請に別途費用がかかるケースが一般的です。
「住宅性能の良し悪しは見た目ではわかりませんし、一般の方は設計図などを見ても理解が難しい部分があります。申請に費用はかかりますが、住宅は高価な資産ですので『認定を受けることで安心を得る』という考え方もあります」
●申請費用の目安
・設計図書類の作成 20万円程度
・技術審査や認定のための手数料 5万~6万円程度
さらに依頼先によっては代行申請料などが加わる
申請に費用はかかりますが、『安心感』を買うという考え方も(画像/PIXTA)
デメリット2:建築コストが割高になる
優れた住宅性能を確保するには、構造部材や住宅設備はグレードが高いものを選ぶ必要があります。
「グレードの高い構造部材や住宅設備は価格も高いため、一般的な住宅と比べると建築コストは割高になります。しかし、長く住める家になりますし、性能に不安や不満を感じながら住むより良いのではと思います。
政府から今後30年間に震度6以上の大地震が発生する確率が発表されたり、気象庁から日本の平均気温は年々上昇傾向にあるというデータが報じられたりしています。今後の住環境を見据えると、高い耐震性や省エネ性は必須の性能といえるでしょう。
さらに、『建築コストは割高だけど、自然災害後に補修すれば住み続けられる家』と、『建築コストは抑えたものの災害後に建て直さなければいけない家』は、コスト以外の観点でもどちらが良いのか明白ですよね」
デメリット3:メンテナンス履歴の作成・保存が必要
長期優良住宅制度の認定を受けるには、申請時に維持保全計画を立て、建築後はその計画を適切に実施する必要があります。さらに、大きな台風や地震の後には臨時点検の実施も定められています。
「維持保全のための点検・補修は、床下にもぐったり屋根に上ったりするため、家を建てた建築会社に依頼して実施するケースが多いです。つまり、維持保全計画を実施するには、建築会社への依頼や、実施記録を作成・保存する手間がかかります」
ただ、実施記録は所轄行政庁などに提出する義務はなく、求められた際に報告すれば大丈夫です。しかし、適切に実施していないと判断された場合、認定が取り消される可能性もあります。
「長期優良住宅認定制度は、『孫の代まで住める家を建てる』というのが基本的な考え方です。せっかく高性能な家を建てても、メンテナンスをしないと性能は落ちますし美観も損ねます。
メンテナンス実施内容の書類を手元に残せば、メンテナンスを頼む建築会社が変わったときもスムーズに引き継ぐことができます。さらに、売却する際、きちんとメンテナンスされた住宅は高い価格で売ることも可能です。メンテナンスには費用や手間がかかりますが、デメリットにはならないと思います」
長期優良住宅を建てるなら、メンテナンスの必要性への理解も大切です(画像/PIXTA)
以上いかがでしたか?