column コラム
住宅購入資金を親から贈与されたとき
今回は、住宅の取得に際して親から資金贈与を受けた時についてピックアップいたします‼
【2022年】税制改正で住宅資金贈与の非課税措置が2年延長!ただし非課税額は減少
2022年度の税制改正大綱が発表され、住宅ローン減税の控除率引き下げが大きな話題になりました。
【2022年】税制改正で住宅ローン減税はどうなる?変更内容を徹底解説
実は、今回住宅関係の税制で改正の対象になったのは住宅ローン減税だけではありません。
「住宅取得等資金等に係る贈与税の非課税措置(以下「住宅資金贈与の非課税措置」)」も改正対象となり、親や祖父母からマイホーム購入・取得資金の贈与を受けるときの贈与税非課税措置が2年延長されることになったのです。
ただし、期間が延長になった一方で、非課税限度額は縮小されることになりました。贈与を考えている家庭には少なからず影響があるでしょう。そこで今回は、改正のポイントと非課税措置を受ける条件について詳しく解説します。
2022年税制改正大綱で住宅資金贈与の非課税措置が2年延長に
2021年末に発表された2022年(令和4年)度の税制改正大綱では、住宅資金贈与の非課税措置が2年延長されました。
<住宅資金贈与の非課税措置とは>
・父母や祖父母など直系尊属から住宅購入・取得資金の贈与を受けたときに、一定の要件を満たせば贈与税が非課税になる特例措置
つまり親や祖父母からマイホームの購入や建築、増改築に使う費用を贈与された場合、要件を満たせば贈与税が非課税になる制度です。通常、年間110万円を超える贈与には贈与税が課せられますが、この特例を使えば親や祖父母からマイホーム購入資金を援助してもらえます。
援助してもらえる家庭にとってはマイホーム購入を後押しする制度でしたが、元々この制度は2021年12月31日までの特例措置でした。それが今回2022年度の税制改正により、2年延長されることになったのです。
出典:財務省「令和4年度税制改正の大綱」より P18二 資産課税「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等」
国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
住宅資金贈与の非課税措置とは?2022年のおもな改正ポイントは4つ
一定の要件を満たせば、贈与税が非課税になる住宅資金贈与の非課税措置。
2022年のおもな改正ポイントは以下の4つです。
①適用期限の延長
②非課税額の変更
③対象物件の条件変更
④贈与を受ける人の年齢が20歳→18歳に変更
このうち①~③は今回の税制改正によるもので、④の年齢変更は成年年齢引き下げという民法改正によるものです。それぞれ、わかりやすく説明していきましょう。
改正①適用期限が2年延長
住宅資金贈与の非課税措置は元々2021年12月31日までの措置でしたが、適用期限が2年延長されて2023年12月31日までになりました。
・現行制度:2021年12月31日まで→改正後:2023年12月31日まで
2年延長されたことで引き続き贈与を受けやすくなっているものの、非課税額や対象物件の条件などが変更になっているため、留意が必要です。
改正②非課税額の変更
適用期限は2年延長されたものの、贈与税の非課税枠は以下のとおり縮小しました。
消費税率 |
住宅の種類 |
【改正前】 2020年4月1日~2021年12月31日まで |
【改正後】 2023年12月31日まで |
住宅取得時の消費税率が10%の場合※ |
耐震・省エネなど一定基準を満たす住宅 |
1500万円 |
1000万円 |
上記以外の一般住宅 |
1000万円 |
500万円 |
※消費税率8%で取得・もしくは個人間売買の中古住宅購入者は改正後も変わらず、一定基準の住宅で1000万円。その他の一般住宅は500万円の非課税枠となる
上記のとおり、それぞれ500万円ずつ非課税額が減少しています。 非課税額を超える贈与には贈与税が課されるため、贈与税の負担が気になる人は、年間110万円以下の金額を数年に分けて贈与してもらう方法もあります。たとえばマイホーム購入年は500万円の贈与を受け、次の年から毎年100万円ずつ贈与してもらう、という方法です。家族や税理士に相談し、贈与額や贈与の時期を検討するといいでしょう。
改正③対象物件の条件変更
非課税枠と同時に、対象物件の条件も以下のとおり変更されました。
改正前のおもな物件条件 |
改正後のおもな物件条件 |
・日本国内にある住宅 ・住宅の床面積(登記簿面積)が40㎡以上240㎡以下 ・家屋の床面積の2分の1以上を居住用に使うこと |
|
中古住宅の場合:取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの |
中古住宅の場合:左記、築年数要件を廃止。昭和57年(1982年)1月以降の新耐震基準に適合している住宅であることとする |
贈与の対象になる中古住宅について、今までは築年数20年以内(耐火建築物は25年以内)という条件がありましたが、廃止されました。2022年以降は1982年1月以降の新耐震基準適合住宅の購入であれば、贈与の対象となります。中古住宅のリノベーションを考えていて、購入・増改築費用の贈与を受ける場合は、条件についてよく確認しておきましょう。
改正④贈与を受ける人の年齢引き下げ
2022年4月1日より、贈与を受ける人の年齢が20歳から18歳になります。
これは正式には2022年度の税制改正ではなく、成年年齢引き下げによる変更です。今までは民法で日本の成年年齢は20歳と定められていましたが、民法が改正され、2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。 他の改正とは異なり、年齢変更があるのは2022年4月1日からです。覚えておきましょう。
住宅資金贈与の非課税措置で贈与を受ける条件
住宅資金贈与の非課税措置で贈与を受けるためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
マイホームの建築・購入・増加築費用を贈与してもらう際は、以下「贈与を受ける人の条件」と「物件の条件」を確認しておいてください。
<住宅資金贈与の非課税特例で贈与を受ける人の条件>
・贈与時、日本国内に住所があること
・贈与時、贈与する人の直系尊属であること
・贈与時の1月1日時点で20歳以上であること(2022年4月1日以降は18歳)
・贈与される年の合計所得金額が2000万円以下であること(40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は所得1000万円以下)
・贈与される年の翌年3月15日までに、贈与された金額を全額あてて住宅用家屋を新築・取得・増改築すること
・贈与される年の翌年3月15日までに対象の住宅に居住すること(または、同日以降にその住宅に住むことが確実であると見込まれること)
<贈与対象になる住宅の要件>
・日本国内にある住宅
・住宅の床面積(登記簿面積)が40㎡以上240平方㎡未満
・家屋の床面積の2分の1以上を居住用に使うこと
・新築または取得する場合は以下のいずれかに該当すること
∟建築後使用されていない
∟中古住宅は新耐震基準に適合していること
∟中古住宅は一定の書類 (耐震基準適合証明書など)を提出し、地震に対する安全性を証明できること
・増改築する場合
∟増改築工事が一定の工事に該当することを(増改築等工事証明書)の提出によって証明できること
∟増改築工事の費用が100万円以上であること
出典:国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について」
築年数が30年以上というような中古住宅や、増改築費用の贈与を受ける際はいくつか要件があるので気をつけましょう。
まとめ
親や祖父母からマイホーム購入のための資金援助を受けられるのであれば、住宅資金贈与の非課税措置は非常に頼もしい制度です。
2022年の税制改正大綱で非課税枠は縮小されるものの、省エネ性能の高い住宅であれば1000万円の非課税枠を利用できます。贈与の対象には省エネ改修工事も対象になっているため、古い住宅を購入して省エネ性能に改修し、贈与を受けるのも一つの方法です。
マイホーム購入で贈与を考えている場合は改正後の要件に気を付けながら、延長期限内のうちに住宅購入することも考えてみてはいかがでしょうか。